奥泉光『桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活』(文藝春秋)レビュー

桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活

桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活



 なんというか、文章それ自体を読んで、自然と笑えてしまうっていうのは、やっぱり幸福なことなんだよなあ、と思ってしまうなあ。“現実”の諸相を選り分けて、コトバで色づけ定着させていく、という小説家として当たり前のことを、芸術に昇華させるのが純文学作家の志なんでしょうが、本作では、それがそのままユーモアになっているから。こういう技量を目の当たりにすると、格の違いってのを実感しちゃうよね。