呉智英『つぎはぎ仏教入門』(筑摩書房)レビュー

つぎはぎ仏教入門

つぎはぎ仏教入門



 呉智英に関しては、三年前に佐々木譲にインネンつけて、見事に自爆した件で、私のなかではポレミカルな言論人としての価値はすっかりなくなったけれども、まあなんやかんや言っても、近代人権主義批判者としてのスジは通しているのは、エラいものだと思っているのです。マンガ批評は、その延長線上なワケだし。本書は、著者なりの仏教再興の道筋を明らかにするため、仏教の歴史を概括して、原理主義的な教義批判を繰り広げる。仏陀本人の内的意識の分裂から、小乗的、大乗的な教理が生まれる。そして、阿含教典成立以後、膨大な「偽経」が産み出され、日本にもやってきた後、ここでも諸派が乱立する。やがて、時代時代の実力者の庇護を受け、土着の宗教になるが、廃仏毀釈も乗り越えても、近現代の時代の波は、仏教寺院の衰退を招かせる。著者は、「葬式仏教」をむしろ肯定して、この道を進むことを慫慂するが、市民社会と折り合いをつけてやっていくってのは、やっぱ難しいよね。