丸山天寿『咸陽の闇』(講談社ノベルス)レビュー

咸陽の闇 (講談社ノベルス)

咸陽の闇 (講談社ノベルス)



 相変わらずの面白さ。謎の展開とその解明が、奇想の領域で結実する。それでリアリティを獲得しているのは、“歴史”というものを、幻想の閾と戦乱や災禍などの暴力的な現実と、その境界線上を蛇行するような、うねりながら直進するような時間性として把握しているからではないか。そしてそれを支える語り口は、実に安定している。