鳥飼否宇『物の怪』(講談社ノベルス)レビュー

本日のエピグラフ

 「(…)獲物に気づかれないように近づくために、周囲の環境と同じような模様になるものさ。攻撃的擬態だよ。どちらも普遍的な生存戦略。(…)」(「洞の鬼」p.120)

物の怪 (講談社ノベルス)

物の怪 (講談社ノベルス)



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 どうも作者には、あっちのシリーズの色がつきすぎているんだけれども、メインはこっちのシリーズですよね? 伝奇ミステリの世界を、動植物の生態学的ペダントリーが彩る。なるほど、こうすると、妖魔の畏ろしさが、有機的感触を媒介にして、不気味なものとして伝わってきますな。推協賞候補作よりも、それを挟んだ二つの作品のほうが、エグさに手が込んでいる。