山田彩人『眼鏡屋は消えた』(東京創元社)レビュー

本日のエピグラフ

 「(…)あの一件でよくわかったよ。人間は信じられるものを信じるんじゃなくて、自分が信じたいものを信じるもんだってことが。(…)」(p.79)

眼鏡屋は消えた

眼鏡屋は消えた



ミステリアス
クロバット10
サスペンス
アレゴリカル
インプレッション
トータル43


 今年の鮎哲賞も、期待に十分に応えるもの。小説におけるリアリティの生々しいところと、戯画性・喜劇性を帯びている部分の乖離が気になるが、後者は皮肉めいた幕引きを図るための呼び水的要素だった。物語の展開に強引なところと、小説の膨らませ方の物足りなさがあるものの、クライマックスの謎解きシーンは十二分に盛り上がる。タイトルを含めてブラック・ユーモアが本作の基調となる。