恩田陸『夢違』(角川書店)レビュー

夢違

夢違



 これで直木賞ムリだったら、やっぱり文春本でなきゃあげないよーってことなのかね。……本作は、作者のホラー系の仕事の集大成的なものになるのではないか。異世界設定のなかで異能力者の悲劇を描く野心的なコンセプトは、作者の無碍奔放な想像力と、堂に入ったリリシズムの捌き方で、“他者”をめぐる物語としての持ち重りを獲得して、しっとりとしたラストにいたるまで、緊迫感が持続する。