年がだいぶ明けてから振り返るのもなんですが、2011年は下半期(5月〜10月)も豊穣でした。『謎ディナ』200万人近くの読者の一割が本格ミステリに目覚めたとしても、20万人。本格の創作コストは高くつくけれども、それが報われる小説市場であってほしいよね。
- 作者: 三津田信三
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/07/07
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第1位:三津田信三『生霊の如き重るもの』
安定株。次作長編はホラー色が強まるそうなのだけれども、そっち系の住人に完全にならないでほしいんだけれども。どうかなあ。
- 作者: 貴志祐介
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2011/07/26
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第2位:貴志祐介『鍵のかかった部屋』
名人芸。つまるところ、方法論を知っているってこと。何の方法論? 小説の構築性の、だ。他の作家が、骨組みにこだわって伽藍を建築するところを、この作者は、煉瓦をひとつひとつ積み上げて、小説空間を囲い込むのだ。
- 作者: 歌野晶午
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/09/07
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第2位:歌野晶午『密室殺人ゲーム・マニアックス』
自分が設定したゲーム空間の生長と自壊を、とことんまで突き詰めていくことを、作者は目論んでいるようだ。反劇場型犯罪ゲームが、劇場型犯罪の領域に突入して、カタストロフィは目前に迫っている気がするが、一体どんな様相を呈するのか、ちょっとゾクゾク。
- 作者: 笠井潔
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2011/10/18
- メディア: 単行本
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第4位:笠井潔『吸血鬼と精神分析』
70年代という時代状況とサイコ・スリラーのトーンが合うこと。人文的環境のターニング・ポイントだった時代と場所に、歴史的古層からの悪意が蘇る。
- 作者: 麻耶雄嵩
- 出版社/メーカー: 講談社
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第5位:麻耶雄嵩『メルカトルかく語りき』
あれ。皆々様、この本の読み方間違えてません? 基本的には、探偵が魯鈍者をからかうお話ですよ。アンチミステリ的目論見がメインだったら、“事件”を構成する諸データを絶対視するスタンスは取らんと思います。ってことは、冒頭のお話を読めばわかる、はず。