大沢在昌『鮫島の貌 新宿鮫短編集』(光文社)レビュー

鮫島の貌 新宿鮫短編集

鮫島の貌 新宿鮫短編集



 何がすごいって、各話五十枚程度の分量で収めているのにもかかわらず、持ち重りのあることといったら。こち亀シティハンターの共演作でさえ、小説のカラーがぶれていないんだもの。善と悪の境界線上に浮かんで消えゆく、大都会の底に蠢く人間たちのドラマを、達意の文章芸で、活写する。