一田和樹『サイバーテロ 漂流少女』(原書房)レビュー

サイバーテロ 漂流少女

サイバーテロ 漂流少女



 こちらも、福ミス受賞後第一作は大々快作。って内容は快い案件ではありませぬが。3・11直後に発覚した大規模なサイバー攻撃計画に巻き込まれた一匹狼のセキュリティー屋が、その裏側の真実に肉迫していく。クライシス・ノベルのかたちを借りたI T社会啓蒙のコンセプトがメインかと思いきや、いやはやきっちりと巧緻なミステリ的結構を満足させる出来。ナラティブの安定感は職人レベルで、充実のP I小説に仕上がった。にしても、サイバーノーガード国家に安寧の未来はあるか。