西村健『地の底のヤマ』(講談社)レビュー

地の底のヤマ

地の底のヤマ



 昨年末に刊行された大長編を読了。危うく積ん読になるところだった。率直な印象としては、とにかく本作は歴史小説として読まれるべきで、炭鉱労働者の土地の様々な因縁の交錯と決着、時代の背景を綿密に組み込みながら小説空間を押し広げた感がある。情念的要素がアンカーの役割を果たして、大味に陥るところを救った。いろいろな意味で、エルロイの諸作と対極的にある作品。