皆川博子『双頭のバビロン』(東京創元社)レビュー

双頭のバビロン

双頭のバビロン



 作者の奔放な想像=創造力は、ゴシックスリラーを、大戦間のデカダンな空気と混交させ、さらにメタミステリ的アプローチによって小説のリアリティを確かなものにするという、幾重にも企まれた物語を構築して、その鋼のような強靭さを魅せつけた。読者は、二度目の大戦前夜のバビロンに渦巻く野心と狂騒に絡め取られる主人公たちの情況の転変を、固唾を呑んで見守るしかない。