石持浅海『玩具店の英雄 座間味くんの推理』(光文社)レビュー

本日のエピグラフ

 「(…)テーマを与えられてから、警察が防ぐ意志を持ちながら防ぎきれなかった事件の記録を読み込みました。でも、あたりまえの話ですが、状況によって失敗要因はバラバラです。(…)」(「傘の花」p.22)

玩具店の英雄 座間味くんの推理

玩具店の英雄 座間味くんの推理



ミステリアス
クロバット
サスペンス
アレゴリカル
インプレッション
トータル40


 座間味くん三度の登場。警備上の失敗に隠された真相を解明するというコンセプトで、作者ならではの逆説のアクロバットが存分に愉しめる。セキュリティというテーマに絡めて敵の正体を探る冒頭二編と最終話のような定型もいいが、その手ではない他の話のほうが、やっぱりスリリング。とりわけ、警察官自身の事件というべき「警察官の選択」が完成度で頭ひとつ抜けており、現世宗教の世俗的論理を揶揄した「住宅街の迷惑」も異彩を放っている。