柚月裕子『検事の死命』(宝島社)レビュー

検事の死命 (「このミス」大賞シリーズ)

検事の死命 (「このミス」大賞シリーズ)



 司法小説の重厚さをアピールするには、現実の司法制度の疲労と腐敗を追及したノンフィクションのほうがスリリングな状況においては、ある種の屈折を強いられるように思われる。「心を掬う」は佳作だけれども、この話のように作者の持っている濃やかな筆致は、制度に担保された“正義”を、実は相対化させるものではないか。