2013年下半期本格ミステリベスト5

 2013年下半期(2013年5月〜10月)、本格でも非本格でも目ぼしいタマがなかったと言われるけれども、いやいやきっちりと収穫はありましたですよ。基本的に、気に入った本しか取り上げないつもりでいたら、エントリを上げる回数がめっきり減ってイカンなー、と思いつつ、出版事情を反映してか文庫オリジナルの新作が増えて、ありがたく思うどころか、ひっそりと刊行されてはこちらが気付いたときにはどこかへ消えている、ということが続き、いざ読めてみれば文庫で出した理由がわかるよーな、という感慨を抱くことが多く、それにしてもケーサツ小説の七、八割は、読んだ時間を返してほしいと思わざるを得なくて。あと、ラノベ系の一部には、“本格”は、完全にナメられているのではないか。


貴族探偵対女探偵 (貴族探偵)

貴族探偵対女探偵 (貴族探偵)



第1位:麻耶雄嵩『貴族探偵対女探偵』
 おめでとうございます。探偵小説史に残る大皮肉といいますか、彼女に同情するのもまた哀れといいましょうか。作者の泰然としたシニックさは、まだ後輩さんたちには、マネできないか。


ネメシスの契約

ネメシスの契約



第2位:吉田恭教『ネメシスの契約』
 今回の黙殺本です。まあ、見事に誰も言上げしてないのは、いかがなものか。高質な作品であることは間違いないので、見逃すことなかれ。




第3位:丸山天寿『死美女の誘惑 蓮飯店あやかし事件簿』
 エンターテインメントとしての安定感が、語り口やギミックの盛り付けなどで目論まれているのは、作者のサービス精神のなせるワザ。この本も、あまり取り上げられていないのは、どうしたものか。


戯作・誕生殺人事件

戯作・誕生殺人事件



第3位:辻真先『戯作・誕生殺人事件』
 作者のサブカルチャーにコミットするマクシムが、手に取るように伝わってくる。創元推理文庫に、テレビ界アニメ界など作者がサブカルを題材・テーマにした作品を収録してほしい。


憑き物 (講談社ノベルス)

憑き物 (講談社ノベルス)



第5位:鳥飼否宇『憑き物』
 作者が、その作風をさらに磨き上げているのは、頼もしいし、ミステリアスなものが、学際的アプローチを通じて追求されるのは、今後重要な方向性になるのかも。