深木章子『殺意の構図  探偵の依頼人』(光文社)レビュー

本日のエピグラフ

 (…)まっすぐ警察に行かず、私立探偵を雇うことを選択する人間は、表に見えている以上の問題をうちに抱えている。彼らを動かしているいるものは不安、もっといえば恐怖だ。(…)(p.5) 

殺意の構図 探偵の依頼人

殺意の構図 探偵の依頼人



ミステリアス
クロバット10
サスペンス10
アレゴリカル
インプレッション10
トータル48


 またまた特大ホームランだ。デビュー後四作で、作者は本格の現在におけるトップランナーのポジションを得たといってもいいのではないか。容易に先読みを許さぬ意表を突く展開、緩急自在の悠然たる語り口、そして緻密なギミック構成――読者を翻弄することにかけては、作者の右に出る者は今現在いないだろう。シリーズ前作もそうだったが、事件の迷宮性がそれを解明する探偵役の相貌をより陰影深くする結構が、本作では限界まで突き詰められることになる。