大沢在昌『雨の狩人』(幻冬舎)レビュー

雨の狩人

雨の狩人



 まだ書く、こういうのを書く、まだまだ作者の力は衰えていない、枯れていない。作者の、現在に偏在する暴力という事象を剔出するその執念は、犯罪小説、ハードボイルドといったパースペクティブを超え出ているだろう。強いていえば、作者の関心は、普遍的な政治闘争の生の形式とでもいったものへ向いているように思う。アンダーグラウンドのエキゾチズムを、もはや売りにしていないのだ。