神谷一心『たとえ、世界に背いても』(講談社)レビュー

たとえ、世界に背いても

たとえ、世界に背いても



 今年の福ミスも一定の満足感を得られた。カタストロフィ・サスペンスとでもいうべきか、それとも、史上最強のイヤミスとでもいうべきか(笑)。いや、冗談ではなく、本作に痛快さを覚えるとしたら、“世界”に対する悪意が、原理(主義)的レベルで構築されて、生半可なイヤミス作品の表層性・低俗性を攻撃するようなアグレッシブさにあるのではないか。今年の低調な新人賞の趨勢に、一矢報いた感あり。