中山七里『ヒポクラテスの誓い』(祥伝社)レビュー

ヒポクラテスの誓い

ヒポクラテスの誓い



 たとえば柄刀一の知的好奇心がアモルファスな破天荒さを感じさせるのに対して、この作者の知的興味は対象に接する深度から措定されているのかもしれない。プロット構築におけるスノビズム的傾向は、読書の満悦感を充たすが、作者に対する期待値の上昇と洗練の増し具合は、一方では、金太郎飴的ニュアンスが出てきかねないのかも。作者の職人性の安定の方向性は、一考していただきたいもの。本作がオモシロかっただけに、そう思うのだ。