- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2016/11/30
- メディア: 単行本
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近年の作者の芸風にナットクしていたわけではないのだったが、しかし現在の日本ミステリの領域で、読者をもっとも納得させうる作品を想像した場合、それは米澤作品に近いかたちになるのだった。どうも現在の“悪意”の産生する場所は、成熟することの困難と断念、ビルドゥングズロマンへの諦念が、露わになるところで、そういった“悪意”や、そこで行使される正義なるものの低回ぶりを、ミステリーに仕立てるのは、作者以上に過不足なくやれる人もいないのだろう。久しぶりの「古典部」シリーズは、このことを否応なく見せつけてくれた。折木、千反田のトラウマが開陳されるくだりに、この作者の凄みを感じる。