櫻田智也『サーチライトと誘蛾灯 』(東京創元社)レビュー

サーチライトと誘蛾灯 (ミステリ・フロンティア)

サーチライトと誘蛾灯 (ミステリ・フロンティア)



 泡坂妻夫エピゴーネンの衣装を纏っているようだが、むしろそこからはみ出たリリカルな部分が、作者の本質だろう。後ろの二編が、真相の意外性が必然的に呼ぶ叙情性がカタルシスを担保する。逆に言えば、泡坂妻夫のあの独特のテイストは、微妙な韜晦癖の産物ともいえるワケで、作者はまずはストレートにリリシズムを追求するべきではないか。