伊吹亜門 『刀と傘  明治京洛推理帖 』(東京創元社)レビュー

刀と傘 (明治京洛推理帖) (ミステリ・フロンティア)

刀と傘 (明治京洛推理帖) (ミステリ・フロンティア)


 歴史ミステリーの異色作だが、文章はこなれていて読みやすく、歴史ものに縁遠い読者にもとっつきがいい。探偵役と黒幕役が入れ替わる設定が面妖な印象を残さず、時代の大転換点においては正義と仁義の乖離が、誰しもを歴史の狂言回しに変える、哀切なリアリティを感得できた。次作が楽しみ。