米澤 穂信『本と鍵の季節 』(集英社)レビュー

本と鍵の季節 (単行本)

本と鍵の季節 (単行本)


  ホームズとワトソン的な権威主義的関係性から脱して、しかし純粋なバディものとも違う、男子高校生ふたりのいささかディスコミュニカティブな学生生活。探偵的思考の絡み合うところと、相反するところの意識の差の間合いがいい。リリシズムを真正面から引き受けた感じで、物語のコンセプトと謎解きが結んだ地点をリリカルに処理した「ない本」が、連作中で秀逸だ。