中川恵一『放射線のひみつ』(朝日出版社)レビュー

放射線のひみつ

放射線のひみつ


 200ミリシーベルトで、致死性のがんの発生率が1%増えるわけですが、もともと、日本人のおよそ3人に1人が、がんで死亡します。つまり、100ミリシーベルトで、がんによる死亡リスクが33.3%から33.8%に、200ミリでは、34.3%に増えるというわけです。(p.100)

 たとえば、野菜は、がんを予防する効果がありますが、野菜嫌いの人の「がん死亡リスク」は150〜200ミリシーベルトの被ばくに相当します。受動喫煙も100ミリシーベルト近いリスクです(女性の場合)。/肥満や運動不足、塩分の摂り過ぎは、200〜500ミリシーベルトの被ばくに相当します。タバコを吸ったり、毎日3合以上のお酒を飲むとがんで死亡するリスクは2倍くらい上昇しますが、これは、2000ミリシーベルトの被ばくに相当します。(…)(とくに100ミリシーベルト以下の被ばくのリスクは、他の生活習慣の中に“埋もれて”しまいます。)/(…)原発事故に伴う放射線被ばくは、自分の意志とは関係ない“降ってわいた”リスクです。放射線被ばくは、その意味で受動喫煙に近いタイプのリスクと言えるでしょう。(pp.101‐102)

 とにかく、第一線で働いている放射線医学者たちを押しのけて、ド素人のジャーナリストや非専門領域である原発専門家たちが、手前勝手にいい加減なことを言っている状況は、却って危険なわけです。本書でも触れられていますが、本来ならば避難しなくていいような住民たちを無理矢理移動させて、ストレスフルな環境に追い込むのは、発がんを含めた、健康被害を招きかねません。全国民必読のICRPレポート111号の解説も掲載されています。