速水敏彦『他人を見下す若者たち』(講談社現代新書)レビュー

他人を見下す若者たち (講談社現代新書)

他人を見下す若者たち (講談社現代新書)



 三浦展下流社会』(光文社新書)につづく現代社会批評のベストセラー。ある程度期待して読んだのだけれども――随所におやおやと思うところが散見される。ま、基本的には、悪ガキとそのイカレた親に翻弄される教育従事者たちの溜飲を下げるために書かれたんだろう。――キーワードである「仮想的有能感」=他者軽視が蔓延したのは、90年代のネオリベ的風潮のせいだ、というニュアンスが本書にはある。確かに、現代の“若者”たちは90年代生まれであるから、ネオリベ的なるものの影響下にあるけれども、しかしそれをいうなら、“大人”たちも「失われた10年」において価値観の転換を迫られたわけだ。どうも“若者”たちを、従来の<子ども>の枠組みに押し込めて、発達心理学のセオリーに従った手当てをするというのでは、根本的な解決にならないのではないか。…………しかしそれにしても、本書をよんでいる最中に、ミステリ評論家の名前が二三浮かんで仕方なかった(笑)。