高橋克彦『春朗合わせ鏡』(文藝春秋)レビュー

春朗合わせ鏡

春朗合わせ鏡



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サスペンス
アレゴリカル
インプレッション
トータル38


 寛政の改革下の江戸を舞台にした、『だましゑ歌麿』『おこう紅絵暦』につづく捕物連作第三作目。今回、あの絵師を主人公にしたのは、作者にとってもろストライクゾーン? 人情噺と陰謀譚を手際よく纏めて抜かりない。がたろサンのひととなりを描いた「がたろ」「いのち毛」、後者は泣ける泣ける。「虫の目」「姿かがみ」は一種の芸術ミステリとしても読めるが、後者はそこに情念が浮き彫りになる。“魔鏡”のトリビアルな言及が、それに憑かれた者の昏い情熱をそのまま現前させ、思わずゾクリ。