思わせぶりなアイロニスト

 第6回本格ミステリ大賞の投票が、『ジャーロ』第24号(2006,SUMMER)にて公開されましたが、斉藤肇のコメントがないのです。棄権したのか、うーん残念だなあ。『弥勒の掌』が候補にならなかったからなのかも。…………私は今回はどの候補作が受賞しても、“大賞”の風格に耐えうると思っているので、その意味では、“あえて”という率直な表明のある剣持鷹士、法月綸太郎のコメントに共感を覚えます。それにしても、ちょっと可笑しかったのが、『向日葵の咲かない夏』に言及する際に奥歯に物のはさまったようなトーンが見られたこと。しょうがないんですが。類似の先行作って、“妹”ミステリのアレと、あと前世紀末の直木賞で選考委員に無惨にもネタバラシをされた(そういえば『X』もそうか)某横溝賞作家のアレもそうなんでしょうか。
 まあしかし、予備選考のシステムは、即刻改善せんといけないでしょうね。HMCのウェブで、くわしい経過が載せられているけれども、これどう見ても、予選委員の、当該年度の対象期間に刊行された作品のフォローの範囲の具合に、候補作決定が左右されてしまうと思われるんですが。特に、その弊害が評論・研究部門にあらわれたといっていいのではないか。候補作アンケートの回答のリストを見ても、タマがなかったわけではないと思われ……。まず、部門ごとに予選委員を分けることは絶対に必要で、特に評論・研究部門は、会員アンケートで挙げられた作品全てに予選委員たちが目を通して、それから議論をやるべきでしょう。時間はかかるでしょうが。とにかく、前回に比べて見劣りがするのは否めないわけで。…………あと、短編のほうもやったほうがいいね、やっぱり。

弥勒の掌 (本格ミステリ・マスターズ)

弥勒の掌 (本格ミステリ・マスターズ)

向日葵の咲かない夏

向日葵の咲かない夏