東川篤哉『殺意は必ず三度ある』(実業之日本社ジョイノベルズ)レビュー

本日のエピグラフ

 (前略)探偵というものは自分を卑下したがるものなのですよ。(中略)心の中では「自分こそMVP」と思っているんですから(P260〜261より)

殺意は必ず三度ある (ジョイ・ノベルス)

殺意は必ず三度ある (ジョイ・ノベルス)


 
ミステリアス8 
クロバット9 
サスペンス7 
アレゴリカル8 
インプレッション9 
トータル41  


 作者がどこかのインタビューで、自作に「ユーモアミステリー」という文句をいれてと言ったら、そんなことしたら売れなくなると編集者に言われたというエピソードを披露していたのを目にして、いやはや隔世の感と思い入ったものだった。中町信が「本格」という文言をめぐって同様のことをぼやいていたのだけれども、時は赤川次郎全盛時代で…………あ、でも本書には「ユーモア本格ミステリー」って銘打ってある。作者の意向が通った? それともカッパさんは京太郎飴(祝・名探偵シリーズ復刊←講談社文庫)と「新本格」しかブランドとして認めないのかな――まあ、なんやかんや言っても、「ユーモアミステリー」という言葉が本作には一番しっくりくる、バカミスじゃなくて。ギャグの出し入れがコテコテのようで、いい具合に緩急つけていると思いますし――トリックの人食い加減も、そのシュールさはワタクシのツボ。今度は、霧ヶ峰涼で『セーラー服と機関銃』やってくれないかしらん(『セーラー服と機関銃』もワタクシにとっては<本格>です)。