日向旦『世紀末大(グラン)バザール』(東京創元社)レビュー

本日のエピグラフ

 この滑稽と崇高、下品さと高貴、貪欲で繊細、卑劣で犠牲的、そしてすべての連鎖。この譬えようのないもの。それがモール。源さんの創った太平天國。(P270より)

世紀末大バザール 六月の雪

世紀末大バザール 六月の雪


 
ミステリアス8 
クロバット9 
サスペンス8 
アレゴリカル9 
インプレッション8 
トータル42  


 ちょっとやさぐれた伊坂幸太郎ってかんじの作品です。これからのミステリは、“文体”において、アイロニカルな含みをもたせることの関しての差異戦略性が求められるのかな。――加藤周一今村仁司が評価した日本における「雑種文化」(文化の雑居性)をそのまま体現したようなアジール儒教が輸入されて「儒学」に高められたように、外国の宗教・文化を“知識”として習得し洗練させる伝統もしくはエートスが、諸文化の「雑種」化を促した。巻末解説で山田正紀が述べている問題点(だってタイトルからして……ね?)については、この「雑種文化」性を最もいかがわしいところで穿とうとした戦略性のゆえではないか。洗練を拒否した「雑種」性――ジーザス・クライスト・トリック・スター、奇蹟は巡るよどこまでも。