山本弘『アイの物語』(角川書店)レビュー

アイの物語

アイの物語



 “アンドロイド”は「人間」の<他者>であるか――というのが、基底的テーマになる…………はず。なんだよね。“アンドロイド”が「人間」と連続性を保つ限り、<他者>ではない、んだけれども。そうすると、“アンドロイド”と「人間」の相違は、民族共同体的差異に類比できるのか。テクノロジーがエティックに還元できるというのは、未開社会における<時間>の流れや習俗的規範等の、「近代市民社会」との決定的相違を鑑みれば、あながち冗談ともいえなくなってくる。――結末は感動的なんだけれども、もっとずっと後に“アンドロイド”が、「あ、ここに<他者>がいる」なんて「人間」のことを指差したりして。