有川浩『図書館内乱』(メディアワークス)レビュー

図書館内乱

図書館内乱


 
 “国民”でも“市民”でもない、<人民>のお子たちのための抵抗権育成型教養小説です。「戦う」っていうのはこういうことだぜ、と「あとがき」かなんかでやたら勇ましいこと言って説教垂れている某ラノベライターに言ってやりたいけれども。『図書館戦争』は「このミス」に入るかな。――成長ドラマの定型をなぞり、各キャラクターのプライヴェートがクローズアップされる。柴崎的処世術が「キャラ」的なるものを支えているんだよね。…………いまのところ「図書館」めぐる抗争は、中央vs地方の構図に収まっているけれども、著作権をめぐっては作家・出版社と対立しておかしくないし、「図書館」自体の資料の取捨選択をめぐる権力性という問題もある(これについては、資料の廃棄処分の恣意性をめぐるトラブルを扱っているけれども)。要は、ネタはまだまだころがっているということで、今後の展開もひとまず安心かな。もしかしたら、「検閲図書館」なんて地下ゲリラ組織が出てきたりして。