光浦靖子・大久保佳代子『不細工な友情』(幻冬舎)レビュー

不細工な友情

不細工な友情



 
西村賢太のあとにこれ読むと、また格別の味わいがあるのです。三十路の女芸人の往復書簡集に、とりあえずは当てこすりの応酬を期待したわけですが、読んでるうちに切なくなってくるんです、皮肉じゃなく。シニカルな自己認識と相手に対する毒舌のボディブロー、繰り出されるイヤミが、なんというか、身体化されているというか、きっと悪意はないんだなあ他意はあるんだろうけれど、と思わせる筆致がいい。光浦がアッパーとダウナーを躁状態で繰り返すのに対して、大久保がダウナーのまま性的リビドーを堪えようとしない。この表出は、おそらくお互いに対する立居振舞いのなせるわざだと思うけれども、最後に置かれる光浦の手紙での自己剔抉と、「おわりに」での大久保の達観は、妙に凄みがある。