芦辺拓ほか『密室と奇蹟』(東京創元社)レビュー


 
 収録作品の配列について、私だったら二階堂黎人加賀美雅之桜庭一樹田中啓文鳥飼否宇小林泰三柄刀一ときてトリに芦辺拓をもってくるなあ。…………柄刀のは相変わらず密度が濃いけれども、この作品は作者の興味とこっちの関心が完全にすれ違ったな。あと芦辺のメタ的趣向には、“メディア”という存在が不可分に係わってくるのを再確認。「本質的にはペンシルバニア生まれの陽性なヤンキー気質の人物」(瀬戸川猛資)であるカーのリスペクトにしては、ちと大人しいかなあ。もっといろんなことしていいのに。