三津田信三『首無の如き祟るもの』(原書房)レビュー

本日のエピグラフ

 「(前略)その祟りの度合いが、もし物凄いものだった場合、その家が無事に存続するよう、逆に淡首様は図るんじゃないかと思う」/(中略)/「もちろん、いつまでも、、、、、祟り続けるために……」(P324より)

首無の如き祟るもの (ミステリー・リーグ)

首無の如き祟るもの (ミステリー・リーグ)


 
ミステリアス10 
クロバット10 
サスペンス9 
アレゴリカル10 
インプレッション9 
トータル48  


 『厭魅の如き憑くもの』『凶鳥の如き忌むもの』につづく第三弾だけれども、この連作シリーズは、小説空間内のナラティヴな地平とその<外部>が、なんというか絶えず主従を逆転し合っているというか、なんとも微妙な拮抗のうちにプロットが進行しているような感を覚える。京極夏彦における「妖怪」が現世うつしよに内在して人‐間の闇の部分を象徴させるものだとしたら、作者の描く“魔”は端的な<外部>である。『厭魅の如き憑くもの』では、ナラティヴな地平がこの“魔”に絶えず脅かされていたが、『凶鳥の如き忌むもの』は逆に、<外部>を志向した者たちのグロテスクな肖像を、奇矯なトリックを介して鮮烈に描いた。それでは、本作においては、「ナラティヴな地平とその<外部>」はいかにその関係性を変奏させているか。――それは、じつに、ナラティヴな地平にいた者が、こちら側に迫ってくるという事態なのだ――“首無し屍体”を通じて。ここにおいて、「首無」は越境者の暗喩となる