本日のエピグラフ
消えていく、なにもかもが、溶けない雪の下に埋め尽くされるように……(「思いは雪のように降りつもる」P307より)
- 作者: 篠田真由美
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/04
- メディア: 単行本
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ミステリアス | 8 |
アクロバット | 8 |
サスペンス | 8 |
アレゴリカル | 9 |
インプレッション | 8 |
トータル | 41 |
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セルフ・ライナーノートともいうべき「あとがき」の中で、「推理小説」のことを「神秘を世俗の論理で解体するジャンルの小説」としたうえで、「ただそれが世俗の論理から一歩も出ずに終わるなら、人間という「パンのみでは生きられぬ」ものを十全にすくい取ることは出来ないだろう」と作者は言っている。だけれども、私が篠田の一連の作品に感じるのは、決してゴシック小説の要素のみに還元できぬ小説世界の確かさである。「世俗」性と「神秘」性は常に拮抗関係にある。「神秘」的要素に拘泥しすぎた“物語”が、“小説”というパフォーマティヴのレベルで<作者>のモチベーションを露顕させてしまうことにより、“物語”をチープなものに感じさせてしまうことはよくあることで、早い話、<作者>がただ単に現実逃避をしている“小説”は評価に堪えないということである。「神秘」的な諸々の道具立ては、人間が制作した以上、エコノミーの論理に原初から汚染されていないと、