永井するみ『カカオ80%の夏』(理論社)レビュー

カカオ80%の夏 (ミステリーYA!)

カカオ80%の夏 (ミステリーYA!)


 
 作者の力量からいってリーダビリティは保証されているけれども、それよりも、先行世代に対するアンビバレントな感情を、きっちりと言葉でトレースするという意識において、若年読者の共感を呼ぶだろう。とくに、失踪少女の「福祉」に相対するにあたっての屈託した心情を吐露する場面がいい。