柳広司『漱石先生の事件簿 猫の巻』(理論社)レビュー

漱石先生の事件簿―猫の巻 (ミステリーYA!)

漱石先生の事件簿―猫の巻 (ミステリーYA!)


 
ミステリアス7 
クロバット8 
サスペンス6 
アレゴリカル7 
インプレッション9 
トータル37  


 『贋作『坊ちゃん』殺人事件』『我輩はシャーロック・ホームズである』の作者の面目躍如の、ジュブナイルにしてパロディ・ミステリーの一級品。オリジナルをそのまま裏返した筆捌きの上手さに感嘆して、そんでもって爆笑することうけあい。“日常の謎”系列の作品だけれども、教養小説的要素がいっさい無い点で、“日常の謎”ぎらいのひとにもとっつきやすいと思われるけれども、「先生」以下変人たちの織り成す生活と異見の狂躁に、“時代”の熱狂もシンクロするのを通奏低音としており、とりわけ「矯風演芸会」は集中のベスト。ラストには思わず顔がほころぶ。