保科昌彦『生還者』(新潮社)レビュー

生還者

生還者


 

 心理サスペンスとして出色の出来映え。極限状況の演出が巧妙で、これは“恐怖”に臨場感がある。“生還者”につきまとう“罪悪感”を下敷きにして、そこにさらに“原罪”というテーマを重ねる作者の周到な意識によって、最後まで緊張感が持続する。なるほど、“罪”を引き受けそこなった者を“神”と呼び留めるのは、痛烈な皮肉だ。