島田裕巳『中沢新一批判、あるいは宗教的テロリズムについて』(亜紀書房)レビュー

中沢新一批判、あるいは宗教的テロリズムについて

中沢新一批判、あるいは宗教的テロリズムについて


 
あれから時は一巡りして、そして現在、中沢せんせーは伊藤整文学賞桑原武夫学芸賞小林秀雄賞をゲット、愛知万博にも参戦、うおっと参画して、すっかり日本のヒューマニティーズの中核派じゃなかった中核的な御仁になられたようで。結局、ニューアカ世代が社会の中枢を占めた一帰趨、とでもいうべきなのかしらん。本書は、いわずもがなの、詰め腹切らされた宗教学者による、中沢批判に的をしぼった何冊目かのオウム総括本。太田光との護憲本が新たに検討対象になっていて、注目される。中沢せんせーの「宗教学者としての自分は死んだ」という発言が、「その後一般には、自分のオウム擁護の発言に対する中沢氏の懺悔・反省として、あるいは新境地(?)への脱皮として好意的にすらとられていった」と指摘する別の宗教学者の論文を著者は引いているが、まあそういうことなのだろうなあ、と。もちろん、「新境地への脱皮」どころか、中沢せんせーに「好意的」なひとたちに囲まれる微温的な共同体の“王”サマになっている、内に「死への衝動」を抱えながら…………「時限爆弾」は破裂するのか。――にしても、お懐かしや『宝島30』、思えば爆笑問題の『日本原論』はここから始まったのでした。