北川歩実『長く冷たい眠り』(徳間書店)レビュー

本日のエピグラフ

 「冷凍睡眠。人体を凍らせて未来の医療に託すんですよ」(「氷の籠」P16より)
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ミステリアス8 
クロバット8 
サスペンス8 
アレゴリカル9 
インプレッション8 
トータル41  


 「冷凍睡眠」をフィーチャーした七つの物語。必ずしも、プロットが「冷凍睡眠」に係わっているものでないのもあるけれども、短編集としてはバリエーションを拡げている。作者の技巧の冴えを見せ付けるのは「素顔に戻る朝」。「凍りついた記憶」は奇妙な味モノとして秀逸。巻末の表題作は、「冷凍睡眠」を宗教的イデオロギー装置として描いた、掉尾を飾るに相応しい力作。クローンがミスディレクションとして上手く機能している。集中の異色作は「闇の中へ」で、ダメ親をめぐる物語だけれども、最後のオヤジの決意が、泣かせる。「冷凍睡眠」において、果たして“魂”は、どの程度“未来”へ転送されるのか、<身体>の毀損のされ具合により、それは左右されるのか、なんてことを思ったりなんかする。