柴田よしき『朝顔はまだ咲かない』(東京創元社)レビュー

朝顔はまだ咲かない―小夏と秋の絵日記

朝顔はまだ咲かない―小夏と秋の絵日記


 
ミステリアス7 
クロバット7 
サスペンス7 
アレゴリカル8 
インプレッション8 
トータル37  


 “日常の謎”と成長小説のお約束のカップリングながら、ひきこもり少女が、己を取り巻く“情況”によって、自分を研ぎ澄ましていく道程を、違和感なく描いていて、筆致の巧さに改めて舌を巻く。これはヤングアダルトのレーベルから出してほしかったなあ。ミステリ的結構としては、表題作が手が込んでいるけれども、人の生における“苦さ”を噛み締めさせるという点では、掉尾を飾る「窓を閉めて」も、その“苦さ”が主人公の転機になるぶん、私たちが“社会”を営むことのうちの難儀さを感得させるものである。