古処誠二『メフェナーボウンのつどう道』(文藝春秋)レビュー

メフェナーボウンのつどう道

メフェナーボウンのつどう道



 本作が濃密な雰囲気を醸し出しているとしたら、それは、自問自答の切実さが文体に昇華しているからだ。これは、“意味”が状況によって剥奪されるのに抗っている、ということでもある。しかし、意味が生み出されるのもまた“状況”の渦中でである。その果てで、いったい何を悟るのか。人間には、“状況”を鳥瞰できることは叶わず、ただ、未来において、この“状況”がどのように価値づけられていくかに思いをはせるしかない。