竹田青嗣 西研『完全解読 ヘーゲル「精神現象学」』(講談社選書メチエ)レビュー

完全解読 ヘーゲル『精神現象学』 (講談社選書メチエ)

完全解読 ヘーゲル『精神現象学』 (講談社選書メチエ)


 
 竹田青嗣の名作『陽水の快楽』の文庫解説で、見田宗介は竹田の思想を、ニーチェバタイユの視線を浴びたフッサールと評していた(たぶん)。本書の基本的なスタンスは、「おわりに」で西研がまとめているように、まさしくバタイユを経由したヘーゲルなのである。「至高なもの」をめぐっての西の見解は、バタイユ的な「自我の解体」が、実は現在においては、リースマンのいう「他人指向」の次元に頽落しているという事態が、そのアクチュアリティを支えていると言っていいように思う。西のいう「生の方向」とは、“欲望”における<自由>のありかたということで、ここから著者たちは、“欲望”論からする社会哲学の構築を企図しているが、<自由>という思想の行方を追究するためにも、著者たちの今後の展開を俟ちたい。