まあ、とにかく、数多の商業誌*1に載った伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』の書評群のヒドイことといったら。だってさあ、本のカバー帯のところに書かれている紹介文の内容から、一歩も出てないんだもの、ほとんどのものが。あらすじ+読みどころ+感想というプリミティブなフォーマットのうちの、前ふたつが折り返しのところに書かれてあるのとほとんどいっしょで、感想のトコロまでいかにもってなことしか書いていない。私が訝しく思うのは、この本を手に取った読者が、これらの文章に対して、いったいどんな感慨を覚えるのか、ということを、書き手の側はどう思っているのか、ということで、編集者側がこんな文章を“書評”として強要しているのならば、版元の雑誌でもそれ以外のところでも、まあなんというか、表現に携わるものとしてのプライドは、ないよなあ、と。ただ、版元のほうは、PR誌で、杉江松恋のこのレビューを載せているので、まずは信頼できると思うけれども。一方で、仲俣暁生が、『小説トリッパー』で、この本の“書評”を書いているけれども、その内容の賛否はともかく、“書評”者のスタンスとして、一番まっとうなものだろう。仲俣氏は、自分のブログで、最近文庫化された某作品の解説(と解説者)を論難しているけれども、これもその賛否はともかく*2、仲俣氏の“スタンス”からすれば、黙認することはできないのは、納得できる。…………でさ、『ゴールデンスランバー』が今年のベストテンに入ったら、また似たような作文、読まされるんだぜ。*3
小説 TRIPPER (トリッパー) 2008年 3/25号 [雑誌]
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社出版局
- 発売日: 2008/03/15
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