牧薩次『完全恋愛』(マガジンハウス)レビュー

本日のエピグラフ

 (…)では、他者にその存在さえ知られない恋は/完全恋愛と呼ばれるべきか? (P5より)

完全恋愛

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トータル41


 “恋愛”とは、非対称的なもの。ロマン主義的な“恋愛”を規定するのは、決して成就されない、ということ。このことを考えれば、作者の命題は真なり、であります。と同時に、移ろいやすい“正史”に対しての、“稗史”としての“恋愛”というモチーフがあるようだ。その“恋愛”が「完全」になるほど、戦中戦後の歴史は相対化されるということなのだろう。