西澤保彦『腕貫探偵、残業中』(実業之日本社)レビュー

本日のエピグラフ

 「一般的な市民にとって役人の杓子定規ぶりは、彼らの常識に馴染むものではありませんからね」(「体験の後」P59より)

腕貫探偵、残業中

腕貫探偵、残業中


 
ミステリアス
クロバット
サスペンス
アレゴリカル
インプレッション10
トータル44


 このひとならではの論理のアクロバットは、相変わらず健在。のみならず、普通の安楽椅子探偵の展開から脱して、“奇妙な味”の閾に接している「青い空が落ちる」と、プロットもまたアクロバティックな「人生、いろいろ」に作者の膂力を見る。ほかのものも、論理に収納されぬ物語的余剰=余情に、作者は小説の最終的な収斂点を見出しているようだ。でも、その手でない「流血ロミオ」がオレ好み。