石持浅海『賢者の贈り物』(PHP)レビュー

本日のエピグラフ

 ひょっとしたら、と思う。磯風ははじめからすべてを了解していて、あえて知らないふりをしていたのではないか。(「賢者の贈り物」P136より)

賢者の贈り物

賢者の贈り物


 
ミステリアス
クロバット
サスペンス
アレゴリカル
インプレッション
トータル41


 おっと斎藤肇の某怪作みたいな仕掛けがあるのかなー、と思いきやスルー――なんてこといったら、そりゃ言いがかりでしょ、と突っ込まれますよね。十のメルヘン(例外あり)をモチーフに、ミステリアスな物語を紡ぐが、作者らしい論理のアクロバットを全面に押し出したというより、それをベースにさらに新たな小説的感興を演出せんとしているようで、それは成功しているといっていいだろう。ラブストーリーへの試みとしては、「可食性手紙」が一番優れていると思う。磯風さんの存在が不気味なのは、「玉手箱」より「最も大きな掌」。