- 作者: 内田樹
- 出版社/メーカー: バジリコ
- 発売日: 2008/07/12
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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著者の最新ブログ本のコンセプトは、「構造主義」だ。「私とは違う時間の中に生きている人に世界はどのように見えているのか私にはよくわからないという謙抑的な知性」の持ち主が構造主義者である、というのは肯えうるところで、で、この「構造主義者」が最初に遭遇する「よくわからない」ものは、自分自身であると。「私」という“他者”、この主題が最も鮮明に現れたのエッセイが、「「すみません」の現象学」だろう。「私が犯したのではない行為について、その有責性を引き受ける」というレヴィナスのあの倫理的主題ですね。そうか、「想定内」とは「光の孤独」のことだったか。他も、『下流志向』や『他者と死者』などの原型というべきものが収められており、ウチダ氏の逆説は、少なからぬイヤミをともなって、冴える冴える。少子化問題を扱ったくだりには、共感を覚えますね。*1
*1:例のNHKの番組内容改変問題に関しても、本文中に触れられており、著者は堂々と(あるいは飄々と?)正論を述べているけれども、私があのとき決定的に違和感を拭えなかったのは、その放送内容がどうあれ、OA前に国会議員が、これまたどういう内容であれ、なんらかの口出しをして、その効果として当初のものから改変されたのならば、問答無用にアウトでしょう、ということが、多くの言論屋たちに否定されていたみたいだったことで、一体全体どういうことなんざんしょ、と。あの「民衆法廷」が当初のバージョンで、公共放送にてOAされたら、それこそもっと大問題になって、あそこらへんの左翼をもっとおおっぴらに叩けただろうに。見通しが悪いひとだったねえ、アベちゃんは、と電撃辞任の日に、ワタクシはこの件を思い返していたのでした。