三浦俊彦『戦争論理学 あの原爆投下を考える62問』(二見書房)レビュー 

戦争論理学 あの原爆投下を考える62問

戦争論理学 あの原爆投下を考える62問



 加藤尚武対テロ戦争中(って、今もか)に『戦争倫理学』を世に問うたのに対抗したわけではなく(たぶん)、「あの原爆投下」に正当性があったかどうか、論理学の正統に則って議論する。「あの原爆投下」の否定派に対して、肯定派に立証責任を負わせるというスタイル(つまり、一般論の立場への、その反論)を基調としているけれども、肯定・否定双方のディベートを通じて、第二次世界大戦末期の政治=歴史的状況を閲することに関心を置いた方が、論理学・歴史学の素人にとってはとっつきやすいだろう(で、論理学の知識が涵養されるのを、副次的効果だとすれば)、てかアタシはそう読むしかなかったです。62の問題の検討を通じて、著者は、「あの原爆投下」正当性はあった、だからこそ、「あの原爆投下」に正当性を付与した“戦争”は許されない、との判断をする(第54問参照)。著者は「あとがき」で、「本書の肯定論をすべて論理的に反駁できれば、そのときこそ無敵の原爆投下批判が展開できるはず」と述べるが、それより前に、本書が一般紙誌でほとんど取り上げられないのは、否定派にとってロジックを鍛え上げる機会を逸するという意味では、不幸な状況ではある――まあ、否定派の論理には“戦争”を抑止する力はない、といわれりゃ、機嫌は悪くなるかな。