北沢栄『亡国予算 闇に消えた「特別会計」』(実業之日本社 )レビュー

亡国予算―闇に消えた「特別会計」

亡国予算―闇に消えた「特別会計」



 一昨年よりクローズアップされてきた「特別会計」という存在――例えば、2008年度の予算規模は、一般会計では83兆円だが、特別会計では、実に歳入ベースで394兆円、歳出ベースで368兆円にのぼる。一般会計と特別会計の間でのカネの行き来による重複計上分を除く、純計ベースで見ると、一般会計の入りが81兆円、出が34兆円に対して、特別会計の入りが155兆円、出が178兆円、要するに、一般国民の目に見えないカネが、目に見えるものの5倍以上存在しているということである。…………財務省やその同伴エコノミストは、特別会計におけるいわゆる「埋蔵金」について、その存在は否定しないが、使えばそれっきり、と木で鼻を括ったような反応しかしなかったが、実は、特別会計の現行のシステムを温存している限りは、予算の使い残しである「不用金」が、毎年10兆円程度でてくるのである*1――著者は最終的に、「埋蔵金」の総額は、フローで42兆円、ストックで47兆円と算盤をはじくが、実際は果たしてどのくらいか。…………ということで、日本国家におけるまさに「闇」の予算である「特別会計」に、能うかぎりの光を当てた、必読にして必携の書。「官」とそのファミリー法人が、潤沢な資金を背景に、いかにやりたい放題やってきたか、この本を読めば、例えばなんで社会保障費が削られなければいかんのか、頭から湯気がでることうけあい。著者の主張するように、公会計制度の透明性を高めるのと同時に、これ以上の国民負担*2をなくすためにも、特別会計は廃止しなければならないが、特会の実態を精査する過程で、いろいろとキナくさいハナシが出てきそうで(第3章参照)。

*1:この「不用金」は各特会の積立金のほか、各特会に通じる独立行政法人公益法人へと流れている。

*2:国債整理基金を除く、9特会の借入金は2006年度で57兆円。特会の借金は、国債整理基金で一元的に経理される。