橋本治『橋本治という考え方 What kind of fool am I 』(朝日新聞出版)レビュー

橋本治という考え方 What kind of fool am I

橋本治という考え方 What kind of fool am I



 飄々とした筆致で、「文学」とそれをめぐる考察を綴ったエッセー集。「文学」をめぐるエッセーで、その優れたものとは、それを読めば、“小説”を書くのに重要な手掛かりを得られるということを、再確認。あまたの文章読本、小説作法の本とは、対極的な位置にある。近代文学をめぐるものと、自身の「小説」へ言及したものを合わせてワタクシ的に解釈すれば、「小説」というフォーマットは、中心人物の存在へと向けた世界構築が必要不可欠であり、それがなければ、“物語”も駆動しない、ということで、おそらくこれは、登場人物の内面もしくはその眼を借りて世界を覗く、ということとは、決定的に違うのだろう。要するに、「小説」を描く自分、というものを、否定していないということで、たぶん、著者は、“作者”という大文字のポジションに、自分を殺されていないのだ。そんな小説家にとって、社会とか芸術というものは、どのように見えているか、という興味で、他のエッセーも読みました。